ピロリ菌のQ&A
ピロリ菌とは
★ヘリコバクター ピロリは胃の粘液の中で生きている細菌で、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん発症の原因にもなっています。
1983年オーストラリアの医師によって発見されています。長さが2.5〜5.0μmのグラム陰性らせん状桿菌です。
ピロリ菌はどうして酸の強い胃の中で生きていけるのか?
★ピロリ菌は強力なウレアーゼ産生能を有しており、胃の中で尿素を分解しアンモニアを作り出し、自分の周囲だけ中性に近い状態に保つことでPHの低い胃酸の中でも長期間生存できる事が分かっています。
ピロリ菌はどうして感染したのか?
感染経路
★ピロリ菌の感染経路はまだはっきり解明されていません。
●昔は不完全に処理された生活用水(井戸水など)に混入したピロリ菌による感染が疑われていました。しかし現在、衛生環境がよくなり、主な感染経路はピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられています。
感染経路の原因の一つとして、離乳食が開始される生後4〜8か月の時期の保護者による「離乳食を噛んで与える行為」が考えられています。
●約80%は家庭内感染(母子感染70%、父子感染10%):離乳食時の口移しや食べ物を口腔内で冷やす行為などで感染。その他兄弟からの感染もある。
●残りの20%は家庭外感染;保育園での他児からの感染(嘔吐物、糞便など)、障がい者施設での感染。
感染時期
★感染時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫能の働きが不十分な幼小児期であると考えられています。
●成人における感染は急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。
成人における日常生活では感染しない?
●ピロリ菌は自然界では胃の中とは違う形で存在しています。その形を変えたピロリ菌が水や食べ物などから胃の中に入っても、成人であれば防御機能がしっかりしており感染は成立しない。
●また日常生活のコップの回し飲みや、食器の共同使用、生水の飲用などにおいては成人では感染しないと考えられている。
★しかし、胃内にいたピロリ菌が吐物などによって体外に出て、その吐物などが万が一他の人の胃内に入った場合は多くが一過性感染で終わる可能性が高いが、持続的に感染する原因となる事がある。
ピロリ菌は自然にいなくなることがあるのか?
★ピロリ菌は一度持続感染が成立すると自然に消滅することは稀で、除菌や胃粘膜の高度萎縮などの環境変化がないかぎり感染が持続すると考えられています。
●本人も知らないうちの抗菌薬内服などにより自然の除菌されているケースもあります。
ピロリ菌はそのままにしているとどうなるの?
★ピロリ菌をほかっておくと感染(胃炎)が長く続くことになります(慢性胃炎)。胃粘膜の感染部位は広がっていき、最終的には胃炎が胃粘膜全体に広がります。
慢性胃炎が長期間続くと、胃の粘膜の胃液や胃酸などを分泌する組織が減少し、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進み「萎縮性胃炎」という状態になります。
●ピロリ感染が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃がんの原因となっていきます。
ピロリ菌の感染診断や除菌治療が保険適応になるのはどんな時?
従来は
@胃・十二指腸潰瘍
A胃MALTリンパ腫
B特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
C早期胃がんに対する内視鏡的治療後
のある方のみであったが、
2013年から「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」も保険適応となりました。
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が有るか無いかは胃カメラ検査が必要となります。
ピロリ菌が自分にいるのか知りたい。
★ピロリ菌を調べたい。まで。
すでに検診や以前の検査でピロリ菌がいることが分かっている時は?
★6か月以内に内視鏡(胃カメラ)検査をしたことが無ければ、ピロリ菌がいることが分かっていても除菌のためには胃カメラ検査が必要です。
●胃カメラ検査を行い、胃炎の存在が確認できれば除菌も保険内で可能です。胃カメラ検査で胃がんが無いことも分かります。
★ピロリ菌を退治するのは何のためか考えたら、現時点の胃カメラ検査で胃がんが無いか確認しておくことは更に重要であることは認識できます。
ピロリ菌がいるか調べたいが、胃カメラ検査は少し抵抗が・・。
保険適応内で行う場合
★内視鏡(胃カメラ)検査を先に行う必要があります。その時に胃炎の存在があれば、同時にピロリ検査も受けられ、保険も効きます。
●ピロリ菌が陽性でも2次除菌までは除菌治療が保険適応内で可能となります。
●胃カメラ検査は6か月以内に実施されている必要があります。それはあまりに期間が経った後では胃がんが新たに出現している可能性が否定できないからです。
★まずはピロリ菌より胃がんがないことの確認が必要であるからです。
保険適応外(100%自費)で行う場合
●胃カメラ検査をしない場合です。
★ピロリがいるかの感染診断や、いた時の除菌治療も全て自費となります。
例外:造影検査(胃のバリウム検査)で胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された方は胃カメラ検査をしなくてもピロリの検査や除菌が保険内で受けられます。
しかし胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある方は内視鏡での組織検査はしておいた方がよいと思われます。
検査でピロリ菌が陰性だったら、もう大丈夫なのか?
★どのピロリ菌の検査も100%の検査はありません。
●検査には偽陰性(ピロリがいるのに陰性と判定されること)や偽陽性(ピロリがいないのにいると判定されること)があるためです。
●よって内視鏡所見と迅速ウレアーゼ試験、組織鏡検法、培養法、尿素呼気試験、抗ピロリ抗体検査、便中ピロリ抗原検査を上手く組み合わせて診断することが重要です。
★一種類の検査でピロリがいない(陰性)と判定されても、内視鏡所見でピロリがいそうであったら他の検査を追加したり、翌年にもう一度胃カメラ時に調べてもらうのが肝要です。
★また除菌成功後にも胃癌が発見されることがあるので、除菌に成功した後も定期的な胃癌のスクリーニング検査は必要となります。
よってピロリがいてもいなくても、基本1年に一回の胃カメラ検査は推奨されています。
ピロリ菌を退治するには
★ピロリ菌の除菌方法まで。
除菌治療には年齢制限はありますか?
★原則的に年齢制限はありません。
●しかし小児や超高齢者においての除菌は慎重に行うべきと考えます。
小児のピロリ菌に関しては小児のピロリ菌感染・除菌まで。
1回目、2回目の退治で副作用が出て、中断したら
●副作用にて除菌の薬を中断せざるを得なくなり、除菌の薬を十分に飲めなかった場合は、除菌失敗になることが多いですが一度除菌判定をしていただきます。
内服できた期間によっては除菌できている人もいるためです。除菌判定でピロリ菌がいなければ除菌成功となります。まだ残っている場合は、2次除菌を検討しますが、どんな副作用がどうして出たのか詳しく調査する必要があり、副作用によっては2次除菌を見送ったり、薬の種類を変え保険適応外(自費)で除菌する必要性も出てきます。
1回目の退治で退治出来なかった。
2回目の退治で退治出来なかった。
ピロリ菌は一度退治出来たら再び感染することはないのか?
●ピロリ菌除菌成功後に、再びピロリ菌が出現する原因として
ピロリ菌の@再燃とA再感染があります。
再燃とは
除菌後にピロリ菌が残存しているにも関わらず、菌数の減少により除菌判定時に陰性と判定(偽陰性)され、その後に菌数の増加に伴い再陽性化するものです。
再感染とは
除菌後にピロリ菌は完全に排除され、その後新たなピロリ菌に感染すること。
再燃と再感染の鑑別には除菌前と再出現時のピロリ菌のDNAを比較する必要がありますが、一般にはされていません。
●本邦の成人においては、除菌治療成功後の再感染率は年間1〜2%未満と報告されています。
よって一度成功すれば再感染の心配はまずないと考えられます。
★しかし除菌成功後にも胃がんが発見される人はいますので、定期的な内視鏡検査や胃がん検診を継続して実施することは極めて重要です。
医療法人社団 正芳会 細野医院
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